新型コロナウイルスワクチン接種における労務管理 |ブログ|さかえ経営労務事務所

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新型コロナウイルスワクチン接種における労務管理

6月に入り、高齢者・医療従事者から新型コロナウイルスワクチン接種が始まりました。さらに、7月に入り、周りの方もワクチン接種を終了した人も見かけるようになりました。

企業においては、まず大企業の職域接種がはじまり、中小企業においてもビル単位・加入団体ベースの職域接種が開始しました。企業のスタンスにもよりますが、積極的にワクチン接種を推し進めているのが現状のようです。

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このような状況下、弊社に上がる相談事としては、「ワクチン接種を行う場合、それは有給休暇なのかどうかのか」ということです。

この論点、現在のところまだ明確な方向性が出ていませんが、ワクチン接種は、ある程度、義務に近いものであると考えると、一般的な健康診断と同じ取り扱いが望ましいと考えます。

 

一般健康診断の厚生労働省の見解は以下の通りです。

「一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものですので、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。」

ただし、精密検査等の2次検査に関しては、有給休暇等で対応する場合が一般的です。

 

上記に基づき、今回のワクチン接種に対する対応を推察すると、

① ワクチン接種日

案1:労働時間内に実施する場合は、労働時間として取り扱う

案2:労働時間内に実施する場合は、特別休暇等の有給休暇を付与する

案3:労働時間内に実施する場合は、通常の有給休暇を付与する

 

② ワクチン接種後の体調不良時

案1:通常の病欠として取り扱う

案2:特別休暇等の有給休暇を付与する

 

が考えられます。現実問題としては、①ワクチン接種日については案1もしくは案2で対応し、②ワクチン接種後の体調不良については、案2を取り扱うのが妥当であると考えられます。

ただ、労働時間内に実施しない人についての差をどのようにするかという論点もありますが、そもそも、接種日は現在のところ、積極的に選ぶことができない以上、均等に対応するのは難しいのではないかと考えています。しかし、仮に、接種日を選ぶのであれば、可能な限り、休日に行うように促すことが可能です。

ワクチン接種後の体調不良に関しては、会社として最大限の配慮は必要ですが、個人差があるとのことなので、通常の病欠と同じように取り扱っても問題なのではと考えています。

 

また、ワクチン接種の有無を会社が管理することについては、医療機関において勿論、管理が必要になりますが、通常の企業においても管理することは問題ないと考えられます。

ただし、ワクチン接種の有無による処遇・配置転換等については、社会通念上の妥当性、合理性等がなければ難しいと考えられますので、注意が必要になります。